ステーブルコインまとめ(5) BUIDL

概要

  • シンボル名: BUIDL
  • Ethereumアドレス: 0x7712c34205737192402172409a8f7ccef8aa2aec
  • 発行元/プロジェクト: BlackRock による USD Institutional Digital Liquidity Fund(トークン化された流動性ファンド) (Securitize)
    • このトークン化プラットフォームには Securitize が関与しており、発行・転送代理(placement agent / transfer agent)として機能しているとの記述があります。 (Securitize)
  • 発行開始 (年月): 2024年3月頃
  • 発行総数(ドル換算)$2,799,827,452 (Etherscan)
  • CoinGecko ランク#58(2025年10月時点) (CoinGecko)
  • 上場する主な取引所: 一般投資家ではなく “qualified purchasers”(一定以上の資産を持つ機関投資家や適格投資家)に限定される可能性があります。

目的

BUIDL は、従来型の金融資産(主に流動性の高い債券や現金相当資産)をブロックチェーン上でトークン化し、投資家がブロックチェーン・ネイティブな形でアクセスできるようにする「トークン化流動性ファンド (tokenized liquidity fund)」という位置付けです。 (Bybit Learn)

この構造によって得られる期待される目的には以下が含まれます:

  • 債券やリスクの低い有価証券等への運用から生じる利回り(配当)を、トークン保有者に還元
  • ブロックチェーン上での相互運用性・流動性(マルチチェーン発行、トークン化による移転・取引)
  • 従来金融と暗号資産市場の橋渡し
  • 透明性・効率性の向上(例えば保有資産の証明、運用報告のチェーン上記録)

なお、いくつかの情報源では「ステーブルコインではない」「安定価格維持を目的とするものではない」「証券的性格が強い」という指摘もあります。 (Bybit Learn)


特徴(他ステーブルコインとの比較含む)

BUIDL の特徴および、ステーブルコインと比較した際の違い点を以下に整理します:

項目特徴・差異点
価格ペッグ(ペッグ方式)明確に「1 BUIDL = 1 USD」を保証すると記載されたソースもありますが、実質的には債券等の運用からの価値を基にするため、完全なペッグ保証をするステーブルコインとは異なる可能性あり。 (フィナンシャル・タイムズ)
償還性/流動性通常のステーブルコインは利用者からの引き出し・償還性を重視するが、BUIDL はファンド形式の構造を取っており、発行者(管理者)が償還を一時停止できる権限を持つ可能性を指摘する記事もあります。 (フィナンシャル・タイムズ)
配当還元性運用からの利回り(配当)をトークン保有者に分配する構造を持つ(追加トークン発行など)という性質を持つ点が、利子を生まない典型的なステーブルコインとの主な違い。 (フィナンシャル・タイムズ)
対象ユーザーの制限一部の情報源では、一般投資家ではなく “qualified purchasers”(一定以上の資産を持つ機関投資家や適格投資家)に限定される可能性があると述べられています。 (Axios)
トークン化マルチチェーン発行後、Ethereum に加えて Aptos, Arbitrum, Avalanche, Optimism, Polygon, Solana など複数チェーンで発行・展開されているという設計が報じられています。 (TDE)
資産割当・偏重報道では、BUIDL の運用資産の大部分(例:$2.7B 相当)を Ethereum 上に割り当てているという記述があります。 (The Defiant)

これらの点から、BUIDL は純粋な「ステーブルコイン」ではなく、「トークン化された利回り型流動性ファンド」として、ステーブルさと運用性を組み合わせたハイブリッドな性格を持つものと捉えるのが妥当だと考えられます。


ニュース(過去1年以内)

以下は、BUIDL に関連して報道された主なニュースです:

  1. BlackRock BUIDL Fund gains $600M AUM in two weeks on Ethereum
     Ethereum 上での BUIDL の資産運用額が短期間で急増したという報道 (Crypto Briefing)
  2. BlackRock BUIDL Fund Hits $600M AUM Surge on Ethereum-Driven Growth
     同様に BUIDL の AUM 増加とマルチチェーン展開を扱った記事 (CoinCentral)
  3. BlackRock’s BUIDL Fund Puts $2.7B on Ethereum as Stablecoins Hold 0.5% of US Debt, Solana Hits $13.1B
     BUIDL の資産配分(特に Ethereum 上での割り当て比率)を報じた記事 (The Defiant)

(補足:これらはすべて “BUIDL” を扱った記事ですが、ステーブルコインという観点のみを扱っているわけではなく、トークン化ファンドとしての視点を含みます。)


メリット

BUIDL に投資または保有することの潜在的なメリットには以下が考えられます:

  • 利回り獲得: 運用資産からの収益(利子・配当相当)をトークン保有者として受け取る可能性
  • 流動性と取引可能性: ブロックチェーン上トークンとして扱われることで、分割・送金・交換の自由度が高い
  • 透明性: 保有資産・運用状況がブロックチェーンや公開情報を通じて追跡できる可能性
  • 従来資本市場との橋渡し: 伝統資産(例:債券、流動性ファンド等)へのアクセスを暗号資産インフラ経由で実現
  • 相互運用性: 複数チェーンで発行されているため、異なるネットワーク間でトークンを移動させやすい可能性

ただし、これらのメリットは理想・意図ベースであり、実際の設計・運用・規制環境によって制限される可能性があります。


リスク

BUIDL を保有・投資する際に考慮すべきリスク点は以下の通りです:

  • 償還停止リスク/引き出し制限: 管理者が償還を一時停止する権限を持つ可能性(流動性が逼迫した場合など)を指摘する記事あり (フィナンシャル・タイムズ)
  • 価格乖離リスク: 運用資産の評価変動がトークン価格に影響を与える可能性。完全なドルペッグが保証されていない構造
  • 信用リスク・運用リスク: 運用資産(債券、現金等)が信用不安・金利変動・市場ショックに晒される可能性
  • 流動性リスク: トークン自体の取引量が少ない、マーケットメイクが不十分でスプレッドや取引コストが高くなるリスク
  • 規制リスク: 証券性トークン・ファンド性をもつ可能性があるため、証券規制・金融規制の適用対象となるリスク
  • 信用・信頼リスク: 発行元や管理者、信託機関、プラットフォーム(Securitize など)の信頼性に依存
  • クロスチェーンリスク: 複数チェーン展開をする設計ゆえ、ブリッジや相互運用の脆弱性、ハッキングリスクが存在

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です