Stream Finance事件から学ぶ:DeFiキュレーター投資の限界とリスク管理の教訓【反省会】

はじめに:DeFiで起きた「想定外の事件」

最近、DeFi界隈で大きな事件が起こりました。
Stream Finance事件」。
私の運用している kackyファンド もこの影響を受け、一定の損失を被ることとなりました。

この記事では、反省の意味も込めて、

  • 事件の概要
  • 影響の実態
  • DeFi投資で浮き彫りになった構造的リスク
  • そして今後の方針

を整理していきたいと思います。


Stream Finance事件の概要

事件の経緯は以下のCryptoTimesの記事が詳しいです。
👉 ステーブルコインxUSD、72時間で400億円が消えた – Stream Finance事件が暴く、DeFiの“見えない支配者”Curatorの正体

ざっくりと時系列を整理すると次のようになります。

  • 10月下旬:分散取引所 Balancer がセキュリティ侵害を受け、約7,000万ドルを損失
  • 11月3日:Stream Finance が約9,300万ドルの損失を発表し、入出金が停止
  • 11月4日:Stream Finance のUSD連動トークン xUSD が $0.16 まで下落(80%以上の価値喪失)
    → Morpho、Euler、Silo などでもUSDCの流動性が枯渇
  • 11月5日:Stream Financeと取引関係のあったUSDxなどもペッグを失う

DeFiプロトコルの脆弱性が連鎖的に広がり、関連する投資家・ファンドが一斉に資金を引き出せない状況となりました。


kackyファンドの被害状況

私自身は Euler Finance を通じて、Stream Financeと取引がされているキュレーター運用プールに資金を預けていました。
結果として、資金の一部は凍結し、約20%がいまだに引き出せない状況です。

ただし幸いにも、複数プールに分散していたため全損は回避できました。
今回改めて、「リスク分散」が資産運用の鉄則であることを痛感しました。


「キュレーター」とは何者か?

今回の事件のキーワードになっているのが「キュレーター(Curator)」です。
これは、他の業界で例えると 投資信託クラウドファンディング に近い存在です。

投資家は暗号資産をキュレーターに預け、キュレーターがその資金を運用。
利益が出ればその一部を手数料として受け取る、という構造です。

しかし問題は、

  • 投資家がリスクを負う一方で
  • 運用者は利益だけを優先しがちで
  • 運用の中身が見えない

という構造的な歪みにあります。


株式投資と比べてわかる「透明性の壁」

株式投資の世界では、金融商品取引法や出資法によって

  • 運用報告書の公開義務
  • 信託保全(顧客資産と会社資産の分離)

が厳格に定められています。

しかし、暗号資産キュレーターにはこうした仕組みが存在しません
投資家が見られるのは、せいぜい「直近リターン」や「TVL(総預かり資産)」程度。
資金がどこでどう運用されているのか、ほとんどわからない状態なのです。

この「透明性の欠如」こそが、キュレーター型DeFiにおける最大の課題であり、
信頼性を崩壊させる土壌になっていると感じます。


今後の見通し:2つのシナリオ

今回のような事態のあと、運用プールや投資家がどうなるか。
過去の事例を参考に、2つのシナリオを考えてみました。

シナリオ1:割引償還(Usual Finance型)

残存資産を基に、管財人やDAOの判断で割引価格で償還するケース。
Stream Financeの損失率が約20%と仮定すれば、60〜80%の返還が理想的なラインです。

参考:What Caused the USD0++ Depeg? – OneSafe Blog

シナリオ2:法的処理(Mt.Gox型)

破産申告を行い、裁判を通して返還が進むパターン。
返金される可能性は上がるものの、解決まで数年単位の時間を要します。

私個人としては、できるだけ早期に整理が進む「シナリオ1」に落ち着くことを願っています。しかし、最新のニュースを見る限り、償還が早期に開始される見込みは薄く、シナリオ2になる可能性が高くなりました。

参考:Silo DAO、未払いローンを巡りStream Financeに対して法的措置を開始


今後の投資方針と教訓

今回の事件で痛感したのは、
リスクの見えない運用は、どんなに高利回りでも危険」ということです。

私は、他人に運用を任せること自体を否定するわけではありません。
しかし、投資信託やプロの運用者に任せる方法には、法律や制度による透明性・保全措置があります。
問題は、その仕組みがDeFiキュレーターにはまだ存在していないという点です。

今後、kackyファンドは

  • キュレーターを介したレンディングから撤退
  • 自己管理可能なリスク構造(例:Liquidity Pool運用)へシフト

という方針で動きます。

DeFiに限らず投資の世界は「利益とリスクは表裏一体」です。
リスクを自分で評価できない運用は、もはや投資ではなく神頼みに近いと実感しました。


まとめ

DeFiは、金融の未来を感じさせてくれます。様々な利益追求方法が存在する魅力的な市場です。
しかし同時に、「透明性なき利回り」はいつでも牙をむく。

今回の事件は、その現実をまざまざと見せつけました。

kackyファンドとしては、
「透明性が低い運用」には手を出さない
「分散」と「自己管理」を徹底する

という原点に立ち返り、今後も長期的な投資を続けていきます。

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